バカ田大学講義録

バカ田大学は、限りなくバカな話題を大真面目に論じる学舎です。学長の赤塚先生が不在のため、私、田吾作が講師を務めさせて頂いております。

都市と地形の関係

人々が集落で暮らす土地が「村」、家々が集まって、商店街や公共機関、鉄道や道路など交通網が発達した土地が「町」、そして周辺の町から伸びる交通網の中心地であり、数百万人が居住と生産活動を営む土地が「都市」です。都市はいかに成立しているか、今回はその土地の地形から読み解きます。

 

農耕都市の成立

紀元前4000〜3000年前、人々が狩猟生活から穀物を栽培する農耕生活に転換することで、人間は一つの土地に定住するようになりました。しかし問題もあります。小麦などの穀物は、同じ土地で栽培すると翌年には大地の栄養が痩せてしまいます。また、水生植物である稲の栽培には大量の水が必要です。

そのため穀物を栽培するには、洪水によって新しい土が運ばれてくる川沿いの湿地帯が適していました。四大文明といわれるエジプト文明

メソポタミア文明インダス文明黄河文明

全て大河の辺りに形成されています。

 

交易都市の成立

紀元前1000年頃には、海上交易によって食糧や生活用品を集めた都市国家が誕生します。ギリシャアテネ北アフリカカルタゴは海沿いに作られた交易都市でした。陸路ではシルクロードの中継点として中国の長安ペルシャ

エスファハンが発展します。交易都市の特徴は

食糧や生活用品を自給できないので、他国との

交易を活発化させること、他国の商人が往来することで自ずと国際化します。

 

政治都市の成立

国の統一を成し遂げた国王や皇帝は、首都として行政機能が充実した都市を計画的に整備しました。洪水被害の怖れがない平地を碁盤状に区画して都市を設計しています。中国の北京や韓国のソウル、日本の平安京など東アジアの

都市に見られます。政治都市の特徴は、都市計画に基づいて設計されたため、古代の道路や建物が現在も使用出来ることです。

 

湾口都市

元々小さな港町が、他国と交易するほど発展するうちに人口が増加し、市街地が無秩序に拡大している都市です。韓国の釜山、ブラジルの

リオデジャネイロ、日本の長崎市などが該当します。これらの都市は海沿いの背後を山に囲まれており、山の斜面に家や商業ビルが建って

います。街中が坂道であり、海沿いに交通網が伸びているため陸路の交通が不便です。

 

海上都市国家

海上交易の要衝にあり、貿易商たちが集まった

土地が、近代化により国家や特別行政区として独立してる都市です。シンガポールや香港などの交易都市に見られます。

これらの都市は世界中から人と商品が集まり、

商品を各国の通貨で支払うため、国際金融取引市場としての側面もあります。

 

砂上都市

アラブ首長国連邦のドバイは、世界最長のビルが建つなど急成長を遂げていますが、元々砂漠に作られた街なので地盤がとても脆いことが

特徴です。ビルの建造のために鉄骨の支柱を

地下30-40mの岩盤層に打ち込んでいます。

都市郊外も全て砂漠なので、砂嵐が発生すると

ドバイ全体が砂で覆われます。

 

イタリアのベネチアは海上の干潟に作られた都市なので、街全体が海に浮かんでおり、船を出さなければ街に入れません。道路の代わりに水路が張り巡らされたベネチアは水の都として世界的な観光地ですが、土地の海抜が0mなので台風の高潮被害で街全体が水没します。近年は地球温暖化による海面上昇が懸念されています。

 

近代政治都市

既存の都市が人口増加でインフラ整備が追いつかない時など、国の行政機能を集積する目的で首都機能を移転させることがあります。移転先の土地は農地や原野が広がる場所で、一から都市を計画します。ブラジルのブラジリア、

オーストラリアのキャンベラ、ミャンマー

ネピドーなどがあり、日本国内では新宿副都心や茨城県のつくば学園都市が挙げられます。

これらの都市は近年に作られたために、自動車道路と歩行者通路の立体交差や、現代建築の建造物、都市の緑化など未来都市的な構造を

持っています。

 

砂嘴都市

北海道函館市は、かつて函館山が一つの島でした。海流の影響で陸地と島の海に砂が堆積し、

やがて陸地と島を繋ぐことで半島状の地形になりました。砂が堆積した平地に建物が集中し、

夜に明かりが灯ることで、市街地と海がハッキリと浮かび上がる夜景が見えます。津軽海峡

早い潮流は好漁場をつくり、函館市は水産物の

水揚げで発展しています。

 

土砂崩れと三角州

広島県広島市中国地方の中心都市として人口

110万人が住んでいますが、市街地の郊外は山林が広がり、人が住めるのは市全体の3割の土地です。都市化の拡大とともに郊外の扇状地にも多くの住宅が立ちました。2014年の豪雨により広島市安佐南区安佐北区は、土砂崩れが多発的に発生し、70名を超える犠牲者を出しました。そもそも広島市は山間部の土砂が押し流されて、河口に堆積して形成された土地なのです。このような土地を三角州と呼び、広島市中心部にほとんど高低差がない理由です。

 

東京都の地形

かつて江戸と呼ばれた東京は、徳川家康が都市設計を行うまで、現在の23区の大半は海であり、周辺の土地は洪水が頻発する沼地でした。

家康は埋め立てを行なって、台東区墨田区にあたる下町を造成しました。しかし江戸の地形は基本的に波打っており、現在も「四ツ谷」

「市ヶ谷」「渋谷」「鶯谷」など、谷状の地形である土地が多く残っています。家康が江戸を拠点としたのは、広大な関東平野の沼地を水田に変えれば、米が江戸に集まる事を見込んでいたからです。そして河川の堤防造成、荒川と利根川の水路変更、水田造成を行いました。