都市の類型
人々が集まる都市は、商業や行政の中心として
発展してきました。しかし都市が作られる
目的は行政や商業のためだけではありません。
今回は都市の類型を見ていきます。
軍事都市
自国の防衛と他国への侵攻に適した土地に
軍隊を常駐させ、軍需産業が集まることで
発展しました。第二次世界対戦の勃発までは
戦争の主役は海軍の軍艦であったため、軍事都市は海沿いの港町が中心です。アメリカの
サンフランシスコ、ロシアのウラジオストク、イギリスのグラスゴーなどがあり、日本国内では、広島県呉市、神奈川県横須賀市、京都府舞鶴市、長崎県佐世保市などが軍港として発達し、現在も海上自衛隊とアメリカ海軍基地が
置かれています。
学園都市
欧米の名門大学は郊外の土地に広大なキャンパスを持っており、数百年の歴史を経て一つの街を形成しています。イギリスのケンブリッジ、オックスフォード、アメリカのハーバードなどがあり、これらの大学都市には世界中から研究者が集まります。基本的に学習と研究のための土地なので、商業や繁華街が発達しません。
首都ですが、世界遺産に登録された旧市街は
エディンバラ大学の敷地内にあります。
宗教都市
世界中から信者が訪れる都市です。イタリアの
バチカン、サウジアラビアのメッカ、イスラエルのエルサレム、インドのベナレスなどがあり
メッカは毎年10月に巡礼があり、世界中から数百万人が訪れますが、近年は東南アジアの経済成長により巡礼者が激増しているため、各国で抽選を行なっています。宗教都市は信者のために作られた街であり、一般人の立ち入りを
認めない場合もあります。
起業都市
近年の情報技術産業の発展とともに、自分たちの技術を普及させたい若手技術者が集まり、
会社を立ち上げている振興都市です。
アメリカのシリコンバレー、インドのバンガロールなどがあります。街全体が新しいアイデアを歓迎しており、企業間の切磋琢磨と情報交換により、世界中に技術革新を発信しています。
歓楽都市
観光産業や娯楽産業によって発展した都市であり、アメリカのラスベガスや中国のマカオ、
境界に位置する砂漠の都市で、カジノ産業により発展しました。砂漠地帯から地下水を大量に組み上げたため、かつては地盤沈下や砂漠の拡大を招いたこともあります。
カジノ産業は景気の動向を受けやすいため、アメリカ経済の下降期にはラスベガスの発展が停滞し、ギャンブル依存が社会問題になることで、街のイメージも悪化しました。
現代のラスベガスは、カジノ目的の客だけでなく、家族連れで楽しめる複合娯楽施設が多くなっています。郊外の砂漠に企業向けの国際展示場を作り、国際会議を開催することで世界中からビジネスマンが集まる複合国際都市に変貌しました。
このような統合型リゾート都市(IR)を経済成長のために誘致する動きが世界各地で加速しており、アジアではシンガポールが先行しています。カジノは海外の富裕層が現金を賭けるため、外貨獲得の有効手段となるからです。日本国内でもIRを経済特区に誘致するため、特定地域でのカジノ合法化法案が国会で審議されています。
中国のマカオ行政特区は、香港に隣接する
カジノの都市で、かつてはポルトガルの植民地でした。現在も旧市街は多くの教会が残り、
世界文化遺産に指定されています。
共産主義国の中国は、表向き賭博行為を禁じて
いますが、元々中国人はシルクロードや海路を
通じて交易していた行商民族であり、商人たちは賭け事が好きでした。マカオは中国全土から
富裕層が集まるカジノの都市として発展し、
その経済規模はラスベガスの7倍ともに言われます。
モナコ公国は地中海に面するヨーロッパの小国で、面積は東京ディズニーリゾートと同じくらい、世界2番目に小さな国です。
14世紀には現在の王家がこの地を支配していましたが、その後フランスの保護領に入ってしまいました。1860年に首都モンテカルロだけ主権を回復しましたが、国土の95%がフランスに渡っています。
周辺を大国に囲まれたモナコは、各国の富裕層を呼び込んで、国際社会での地位を上げることに取り組みました。19世紀にはカジノ収入が経済9割を占めていますが、世界対戦の影響を受けて何度も国家消滅の危機に瀕しています。
第二次世界後、ハリウッド女優であったグレース妃が王室に入ると、アメリカ人観光客が急増しました。現在のモナコ公国は、F1グランプリの開催や王宮施設の公開で観光客を誘致すると同時に、所得税や法人税を免除することで
世界中から富裕層が定住するリゾート都市に
なっています。
京都市は平安京の時代から内裏(京都御所)に朝廷が鎮座する国政の中心でしたが、明治時代に
皇居が江戸に遷都したことで、東京が国政の
中心になりました。
21世紀になると、アジア各国は経済成長を
遂げ、一般国民の生活水準が向上することで
海外旅行客が増加しています。京都市は長い歴史のなかで、宗教・商業・学業・文化など様々な都市の要素があり、現代は観光都市として
国内のみならず、世界中から観光客をおもてなしする政策をとっています。