南国の貧しさと豊かさ
金持ちの人生論
長年の努力が実って、金持ちとして成功した男がいた。彼は南の島で連日バカンスを楽しんでいたが、現地の人々は貧しいままでいるのに
全く努力せずに生きてることが気になった。
「これからは気ままに生きるのはやめて、毎日漁に出て、金を貯めるんだ。」
「金を貯めてどうするのです?」
「生きていくのに充分な金があれば、自分と
同じように毎日遊んで暮らせる。これが
人生の目的だからだ」
「遊んで暮らすことが目的なら、今の私たちの生活と同じですよね。」
冬がある国の豊かさ
有史以前に北国と南国に住み始めた人間の
豊かさは同程度でした。北国には冬があり、その間は動植物の成長が止まります。そのため北国で食糧を得られるのは春から秋にかけてであり、長い冬を過ごすためには食糧を備蓄しなければなりません。「豊かさとは働いて食糧を蓄えること」これが北国の労働観であり、やがて資本を蓄える発想に繋がります。
北国の気候に生きる人々は、冬を快適に過ごす事を目的に、強固な住居を作り、燃料を蓄えます。また、冬の間の食糧を得るために南国との交易を活発化させました。厳しい環境に生きる事で、生活を発展させたのです。現代でも
イギリスは資本主義発祥の国として、ロンドンに巨大市場を持っています。また北欧諸国の
人口は100万人単位ですが、フィンランドのNOKIA、スウェーデンのIKEA、デンマークのLEGO社など、世界的大企業があります。
南国の貧しさ
欧州諸国の緯度は高く、冬場はとても寒いのですが、ギリシャ、イタリア、スペインなどの南欧地域は地中海性気候に恵まれ、冬場でも暖かいために、中世時代から富裕層の避寒地としてリゾート産業が盛んです。
そして南欧の人々はスペインの昼寝習慣に示されるように、労働生産性を上げるという発想があまりありません。現在南欧の国々はギリシャ危機を発端に経済危機状態であり、失業率がとても高くなっています。
これは一国の中でも同様で、例えばハワイ州は
アメリカで最もホームレスが多く、沖縄県は国内で失業率が最も高くなっています。リゾート地の実情は、観光産業以外の発展がなく、景気の動向に左右され易い貧しい土地なのです。
島国の豊かさと時間感覚
南の島国は、海外リゾートとして人気ですが、
そもそもリゾート旅行の目的とは「何もしない」事です。都会の時間に追われる人々が、
休息を求めて訪れるのです。これらの島々は
蒼い海と砂浜が広がるだけで何も活動する事がありません。
それは現地人にとっても同じです。島々はサンゴ礁で出来ているので、地面が殆どなく農業が出来ません。雨はよく降っても川がないので、水の確保が一番大切な仕事であるほどです。人々は魚を食べて暮していますがサンゴ礁の海は浅瀬が広がり海流が混ざらないので栄養分に乏しく、食用魚を大漁にとれないのです。
金を得るためには外国人観光客を相手に商売する必要があるのですが、そもそもリゾート施設が外国資本で建てられているので、自国の産業が発達しません。リゾート地の買い物は全てアメリカドルで支払えますが、現地人もドル札で収入を得て外国製品を買うため、自国通貨が
流通しない国すらあります。
人々は自給自足に近い生活を送っていますが、それは自分の時間を自分でコントロール出来るということ。先進国の消費社会は自分の時間を売り、金を得ることで成り立っていますが
都市社会に住む私たちがリゾート旅行に憧れるのは「働かないことで自分の時間を取り戻す」
ためです。近年は田舎暮らしやスローライフが注目されていますが、私たちは南国の生活と比較して、自分は何のために働くのか、一体豊かさとは何かを問われているのです。