お金の使い方
イソップ寓話「石持ちの男」
コツコツと貯蓄に励んで老年を迎える頃には、一廉の金持ちになった男がいた。彼は長年かけて貯めた金を誰にも盗られない場所を考えに考え、結局は壺に入れた金貨を道端の土深くに埋めておいた。そうして毎日、壺が無事なのか見に行き、自分の全財産があることを確かめると安心するのであった。
毎日同じ場所を見回りに行くのだから、道行く人々には老人が大切な物を隠しているのはバレバレであった。案の定すぐに土が掘り返され、ある日老人が見に行くと壺を埋めた場所は盗掘された後であり、男は全財産を失った。
一生の苦労を一瞬で失ったことに絶望した老人は、道端でいつまでも泣いていた。道行く人々は彼を心配して、何を嘆いているのかを尋ねる。隠しておいた全財産を失った。嘆かずにいられようかと言う男に、その辺の石を埋め戻して、毎日見回りに来れば良いではないかと人々は答える。
老人「馬鹿にするな!石コロが金の代わりになるか!何にも使えないではないか!?」
人々「でもあんたは、金すら使おうとせずに隠しただけだろう。あんたにとってのお金は自分が安心するためのお守りだったんだ。お金は誰でも交換する価値を保つために金貨で出来ている。自分の安心のために一生隠しておきたいなら、財産は金貨も石コロも変わらないだろ。」