バカ田大学講義録

バカ田大学は、限りなくバカな話題を大真面目に論じる学舎です。学長の赤塚先生が不在のため、私、田吾作が講師を務めさせて頂いております。

繋がり社会の網

2000年代の初頭から、個人でのインターネット利用が全世界で爆発的に普及し、テレビや新聞などの既存のメディアが独占していた情報の発信を、資本や技術のない一般人でも配信出来るようになりました。

ユーチューバーやブロガーといった職業が登場し、一般の人々もフェイスブックやインスタグラムに日々の生活を綴っています。個人でビジネスをする人にとっては、SNSは費用をかけずに宣伝出来る最適な方法であり、才能と野心を持った人々に良い時代が来ました。

SNSは学校時代の同窓生など、現在は異なる環境にいる人々と繋がりを保てるだけでなく、マイナーな趣味を持つ人同士を新たに繋ぐことも出来ます。

現代社会は人と人の繋がりが希薄になっていると言われがちですが、それは同じ場所に暮らしていても気の合わない他人に興味がないだけです。学校でも職場でも家庭であっても同じことで、目の前にいる「どうでもいい人」より遠くにいる「大切な人」とのコミュニケーションを

優先しているのです。SNSの登場で人同士の繋がりは以前よりも濃密になっています。それはネットに接続している限り他人に情報が漏れ続けているからです。

 

電子の檻

英国ロンドンなど、テロを警戒する都市は街中に監視カメラが設置され、警察本部で解析しています。日本の場合、公共の場に監視カメラを設置するのは駅の改札や繁華街に留まりますが、コンピュータの解析技術は一瞬で個人を特定します。

例えば街中で事件が発生した場合、警察は現場付近のコンビニやATMの監視カメラに容疑者が映っているかを確認し、容疑者を顔認証システムにかけます。顔認証システムは個人の身長や体型、目鼻立ちなどをデータ化して付近の監視カメラの映像と比較します。街中の監視カメラ上には1時間の映像に数百、数千人が映っており人の目だけで個人を特定することは困難ですが、コンピュータは数秒で一致する人物を特定します。最新のシステムはマスクやサングラスで変装しても個人を特定出来ます。

Suicaなどのカードは電子マネーをやり取りしているだけではなく、個人情報も記録しています。駅改札のコンピュータを照合すれば、カードの持ち主の名前と住所、いつ何処で電車に乗り降りしたのかが瞬時に分かります。

主要道路や高速道路に設置されているNシステムも車のナンバーだけでなく、搭乗者の顔認証が出来るまで精度が上がっています。街中など人目につく場所で犯罪を起こせば最期、私達に逃れる術はありません。

 

ネットストーカーの恐怖

警察のデジタル捜査力の向上は監視社会に繋がるとして、捜査手法の適法性が疑問視されていますが一般人には安全な社会になります。しかしこの様な個人情報は一般人が悪用することも出来てしまいます。

例えばGoogleで自分の名前を検索すると、フェイスブックミクシィ、インスタグラムの過去の投稿が検索出来ます。いつ、何処で、誰と何をしていたのか、誰でも検索出来る状態なのです。これが恋愛のトラブルなどに大きな問題となります。恋人や配偶者の過去の履歴を閲覧出来る状態ですから、過去に誰と付き合っていたのか、どういう相手だったのかが分かってしまいます。逆に過去に別れた相手の現在も簡単に分かってしまいます。

多くの人は嫌な相手をブロック設定してSNSから締め出しすことで安心します。ですが、SNSグループ内の友人たちはその相手と繋がりを保ったままなのです。間接的に情報を得ることは可能であり、その場合は自分の知らない内に個人情報が漏れていることになります。

自分にとって絶交したい人間が、友人にとっては繋がりたい人間であり、さらに自分も友人とは繋がっていたいという状態。現実空間では三者が同じ場所にいることはないので、情報は殆ど流れないですが、SNSはインターネットの仮想空間であり三者は同じ場所にいるのです。

別れた相手の現状などを検索するのは、普通は単なる出来心で終わりますが、相手に対する執着がある場合SNSを通じて情報を集めるストーキングに発展し易いのです。具体的な被害が何処まで出るかは相手次第ですが、個人情報を勝手に集められているのは身近にある恐怖です。

匿名のブログ管理人の本名と住所が拡散するケースもあり、一度インターネットに流れた情報は簡単に複製できるため、拡散元の情報を削除できたとしてもコピー情報はサイバー空間に残り続けます。もしも自分の現状を知られたくない人物が思い当たれば、SNSに安易に投稿するのは危険です。サイトを閲覧するのは、自分の友達だけではないのです。

SNSの繋がりは自分がコントロール出来る範囲を超えた情報の網であり、私達は網の中を泳いでいるのです。