サッカーの組織論
世界で最も愛されるスポーツ
今回はサッカーの魅力を解説します。サッカーはイングランド発祥で、やがてヨーロッパ各地に広がり、当時植民地であった南米諸国や
中東、アフリカにも広がりました。基本的にボール1個あれば楽しめること、ゴールに入れれば得点する単純なルールであるため、経済・教育水準の低い途上国でも競技人口が拡大し、
世界のどの地域でも人気があります。サッカーのワールドカップが盛り上がるのは、欧州、
中東、南米、アフリカ、アジアの各地域に
サッカーの盛んな強豪国が揃っているから
です。
野球の世界大会では、参加国は東アジアと
北米、カリブ海諸国だけです。インドやオーストラリアなどの旧英国領では、クリケットが国民競技ですが日本では殆ど知られていません。
このように各スポーツの人気は国民性などもあり、世界各国で異なるのが普通です。サッカーは世界どの地域でも普及している特殊な競技
なのです。
サッカーで学べること
日本中どこでも地元のサッカークラブは存在し、中学・高校の部活動も盛んなので、子どもがサッカーを始めるのは簡単です。世界では、紛争地帯やスラム街の街角など死と隣り合わせの場所ですら、子どもたちはボールを蹴っています。球をゴールに入れるだけの行為になぜこれほど熱中出来るのか。それはサッカーの社会性と目的にあります。サッカーに限らず球技の勝敗はゴールの得点で決まります。そして球技はチーム戦で戦う。チーム全員が同じ目的に向かって協働することは社会集団を維持するために人類の本能として刻まれており、サッカーは
それをシンプルに表しています。
サッカーはゴールに得点することが目的。ですがそのためには、FWだけがシュートを決めれば良いわけではありません。DFが相手の攻撃からボールを奪って反撃に転じること、MFがコートの中継を繋ぎFWにパスを出すまでの一連の流れ全てが目的に向かっています。
小学生のサッカーは、最初に全員がボールに群がるような動きをします。狭いエリアにチームの主力が集まってしまうので、他のエリアの守備と攻撃は手薄になる。ここで隙がある位置にボールを運ぶことが出来れば、それだけ有利になります。ここで初めて選手たちは学習するのです。サッカーは点ではなく、フイールド全体を使うのだと。
この時の学習は教えによって得られるものではなく、自分の頭で考えた結果としての気付きになります。学習とはどうしても先生の教えを受ければ理解した気になります。しかしその教えは他人の思考の結果を記憶しているだけで、自分の頭で思考する「過程」が抜けがちになります。しかし思考過程を経ていると、状況に応じて様々な思考と行動が可能になり、社会人としての臨機応変な立ち振る舞いが出来ます。
思考の材料としての基礎知識が少ない小学生のうちから自分で思考する機会は殆どありません。サッカーはその貴重な機会なのです。
サッカーの大切な学び、それは個性と役割の発見です。自分がFWになりたくても、得点力が低ければ他のメンバーがFWになります。しかし自分に持久力と、全体を見渡す視野があれば
MFになれます。そしてチームが一つの目的を
持っている以上、能力の違いはチーム内での役割が異なるだけです。そしてこの身体能力の違いこそが個性であり、自分の個性でチームに貢献するにはどの役割が適切であるか発見するのです。サッカーは11人の小さな集団ですが、チームの目的を達するために、自分は持てる能力を最大に発揮するにどう闘うか。これはどれほど大きな集団に所属してもついてまわる個性と
役割の両立を巡る課題です。
自分は個性的であると思っている人は大勢います。残念なのは人間の個性は社会集団の中で役割が少ないのです。ファッションやコスプレを生きがいにしている人も、普段はスーツ姿で仕事する社会人でしょう。小説や演劇などの自己表現を行なっている人は、本業の収入が殆どありません。残酷ですが、自分の個性とやりたい事は社会に必要なポジションがないのです。
一般の人は収入を得るために社会集団に所属し、そこで何らかの役割を与えられます。自分の個性に合っているかは全く分かりません。
自分は集団の中で何が得意で、何が苦手かを
理解することが個性。その個性は集団のどの立場にいれば最も生かされるのかを考えること。
サッカーをすることでそれに気づくのです。