話し合う技術
営業マンの交渉から夫婦の会話に至るまで、私たちは様々な場面で意見を調整するために話し合っています。ですが双方が納得いく結論を得ることは難しい。何故なら私たちが話し合う目的は、双方が妥協することではなく、相手を自分の意見に合わせるためだからです。
話し合いの前提
話し合いを始める前に、そもそも両者はどこを目指しているのでしょうか?例えば営業マンと顧客の関係では、前者は商品の販売利益を上げることが目的であり、そのために商品を売る、高く売る、多く売る、保障コストを下げるなどの思惑を持って交渉します。
対して後者は出費を下げることが目的であり、安く買い叩く、高ければ買わない、必要量だけ発注する、代金支払いを引き延ばすなどの思惑を持っています。両者は正反対の目的を持っておりそのままでは交渉が噛み合いません。
話がまとまるとは、どちらかが相手の言い分を呑んで妥協したということです。交渉とは意見や利害の対立する相手との戦いであり、決して楽しい話し合いではありません。交渉を優位に進めるとは相手の思惑を読んで弱点をつけるかに掛かっていますが、仮に自分の主張を通した場合はどうなるか。
自分としては優位に立ったと思いますが、相手にとっては「負けた」という感情が残ります。少なくとも自分に良い印象は持ちません。話し合いは双方の利害や思惑が食い違いが出た時に調整するための手段ですが、片方の主張に合わせた形で意見がまとまると、もう片方は負の感情を抱えたままになります。店と客のように、二度と会わない関係であれば問題ありません。しかしこの関係が長年の取引先であったら、或いは夫婦間であったらどうでしょうか。
明らかに意見のパワーバランスが偏っており、両者の関係は支配する側と支配される側になっています。そこには「利用関係」があるだけで、「信頼関係」がないのです。
私たちは意見が対立した時には話し合いが大切だと言います。そして「話し合い」がまとまるとは、自分の意見に相手を説得することだと、
大抵の人は考えているのです。
「話し合い」が上手くいかないときは、相手が聞く耳を持たないからだと考えがちですが、その相手はあなたから精神的に支配される感覚が嫌だからこそ抵抗しているのです。
私たちが話し合う目的が相互理解ではなく、意見の服従になっていることは良くあります。話し合いの前提として、相手を自分の意見に引っ張らないこと、目的はお互いの理解にあることを双方が確認して話し合う必要があります。