バカ田大学講義録

バカ田大学は、限りなくバカな話題を大真面目に論じる学舎です。学長の赤塚先生が不在のため、私、田吾作が講師を務めさせて頂いております。

防災省をつくろう

7月6日に九州北部を襲った豪雨は、未だに被害の全容が掴めず、被災者を救助している現在進行系の災害になっています。

日本は世界の地震・火山の4割が集中しているといわれる災害多発国です。近年だけでも、

雲仙岳噴火:平成3年6月、死者43人

阪神淡路大震災:平成7年1月、死者6433人

三宅島噴火:平成12年6月、死者なし

有珠山噴火:平成

中越地震:平成16年10月、

能登半島地震:

東日本大震災:平成21年3月、死者15893人

御嶽山噴火:平成24年10月、死者57人

広島市多発土石流:平成26年8月、死者73名

伊豆大島土石流:平成25年、死者39名

熊本地震:平成29年3月、

が発生しており、歴史を下れば関東大震災(大正12年:死者10万人、東京、神奈川壊滅)、宝永の富士山噴火(1700年:江戸に火山灰が積もり、記録的な冷夏による飢饉発生)など、首都圏が全滅する規模の災害が100年単位で繰り返されています。この国に生きる限り災害から逃げ場は

ありません。

 

災害対策

自然災害において、事前予測がある程度確立しているのは大雪と火山噴火だけです。地震・気象予測はまだまだ途上であり、地震や豪雨、土砂崩れはいつ何処で発生するか分かりません。

例え予測が確立しても、出来る事は事前に住民を避難させるだけであり、命は守っても生活基盤は破壊されます。

台風に原子爆弾が無効であるほど、気象エネルギーは膨大です。地震や火山のエネルギーも、人類が制御出来るエネルギーとは桁違いであり自然災害そのものを封じる手段はありません。現在の技術水準で可能なのは、災害の兆候から被害を予測し、行政単位で住民を避難させること、避難住民の生命と生活を守ることです。

 

災害対策の難しさ

日本は災害に遭うたびに、災害対策の課題を検討し、体制を進化させてきました。東北地方沿岸部は、明治時代・昭和初期にも津波被害で壊滅していますが、当時は国や自治体が救護することはなく、生き残った住民たちは自力で復興するしかありませんでした。

平成に発生した阪神淡路大震災によって防災行政の大切さが認識されます。それ以来大規模災害の発生時は内閣府に対策室が設置され、現地の情報を収集しながら自衛隊ハイパーレスキュー赤十字医師団、自治体職員を迅速に派遣する体制をとっています。

被災地住民の必要性は日を追うごとに変化します。生命の安全と家族の安否から始まり、持病薬の確保、避難所の安全とプライバシー、自宅の状況と生活の再建、金銭問題、ペットの保護

などの問題が降りかかります。

被災地の自治体は住民の要望に応えるためにフル稼働しますが、自治体職員もまた被災者なのです。彼らは住民のため情報を収集しますが、本当は自分の家族の安否を確かめたいのです。必要なインフラが壊れている中で慣れない業務が押し寄せる、自分の家族の行方すら分からない状況は、職員たちの心身を削ります。

災害復旧には地域の実情に通じた地元職員が必要です。ですがその人たちがオーバーワークになってしまうのです。災害対策には実労を災害に慣れない地元自治体に委ねるのではなく、災害時の行政運営に慣れた専門家集団を派遣した方が効率的ではないか、その様な見解から防災省構想が出て来ました。

 

防災省の構想

日本は毎年台風が上陸し、数年に一度は巨大地震の被害が出ています。災害の復旧に当たるのは第一に地元自治体であり、そこに防衛省消防庁国土交通省気象庁、他県の自治体職員、団体職員、企業の出向、報道メディア、民間ボランティアが集まります。

この方たちは確かに復興支援としてやって来ていますが、本来別々の組織で働いており、仕事のやり方も目的も全く異なります。地元自治体は各団体と情報を共有しながら災害状況に応じて仕事を割り振るのですが、そもそも自治体職員は、各組織の仕事内容を知らず、集まった組織は地域の実情を知らないために、先ずは相互理解の時間がかかります。

災害復旧は人命救助から電気水道などのライフラインまで、迅速な対応が求められます。しかし道路と通信が寸断された地域に持ち込める物資と人員は限られます。

この限られた資源を何処に優先配分すべきかが問題ですが、被災地は役場が被害を受けている場合もあり、全てが大混乱な状況です。ここに地域の実情と災害対策の両面に通じた組織を派遣し、臨時の行政府を立ち上げる。これが防災省の仕事です。

 

兵庫県の取り組み

1995年に阪神淡路大震災を経験した兵庫県は、全国から自治体職員が応援に駆けつけ、災害復旧にあたりました。その時の経験から兵庫県は各地の災害にいち早く県庁職員を派遣しており、防災ノウハウの蓄積や兵庫県医療センターによる災害医療対策も行なっています。災害発生時の迅速対応と自治体の機能をまとめて供給する取り組みは大きな成果を上げています。

この取り組みを国を中心に行うために、現在は内閣府に臨時で設置される災害対策室と復興庁を常設の省庁に改変し、各省庁や全国の自治体、防災研究所で構成される新たな組織を立ち上げるのです。

 

防災省の仕事:平時

平時の防災省は地震などの災害シュミレーションを繰り返し、自治体に対して地形や地盤、都市の構造と人口構成によってどのような被害が出るか、どの様な対策が必要かを周知します。

自治体は独自の防災計画を策定することが可能になり、いざ災害が発生しても、シュミレーションに基づいた行動マニュアルに沿って自治体と防災省が協働出来ます。

また、自治体や企業の防災担当者の講習受講、小中学校への防災教育、木造家屋密集地域などのハザードマップ作成、災害医療や災害通信、災害物流システム、気象・地震発生の研究を行います。

 

防災省の仕事:災害発生時

災害発生時には、衛星写真の解析により各地の大まかな被害を予測します。そして被災地に有人ヘリコプターを飛ばし、そこから子機としてドローンを飛ばします。集められた映像は省庁の中央コンピュータで解析し、熱反応などでどこに生存者がいるかを調べます。その間に自衛隊とレスキュー隊、GMAT(災害医療チーム)を編成して高速ヘリで現地に派遣します。

防災省は事前に各自治体と、首長の要請がなくても第一陣復旧チームを派遣する協定を結んでおきます。これまでは自治体からの要請と内閣府の出動命令で救助隊を派遣していましたが、防災省の対策室には大臣以外にも、代理で出動命令を出せる役職が常駐しており24時間体制で運営します。これによりいつ何処で大規模災害が発生しても3時間後には救助が来る体制を作ります。

第2陣としてその地域の実情に詳しい行政職員と、公衆衛生班、電気・通信・水道・交通などのインフラ復旧班を派遣します。被災地に近く使用可能な空港までは空路を使い、そこから先は災害用車両に乗って陸路を通ります。道路が寸断されていると足止めになるため、急勾配や水上を走れる特殊車両が必要になります。

この時に主要道路が何処まで通れるか確認し、物資の輸送ルートを確保します。道路が寸断された箇所は狭い道を大きく迂回しなければなりません。救援物資の輸送と被災者の避難を優先させるために、個人車での利用は制限します。

被災地に到着した第2陣は、現地職員と交代して行政を代行します。この時に現地対策本部を設置します。これで防災省から逐一指示を受けなくても現場の判断で各地の避難所に物資と救護員を送り、具体的な被災状況を調べます。そして被災地への支援の優先順位を決めます。

被災地には全国の自治体や個人から大量の支援物資が送られますが、それがその時のニーズに合っていないことが問題視されます。例えば古着などを支援物資として送ることは意味がありません。被災地は水が不足しているので身体を洗えず、洋服の着替えも少ないからです。もし現地で使わない物が大量に送られたら、限られた物流に無駄が出てしまいます。それを防ぐためには、支援物資の中身が何であるかを明記させると同時に、物資を防災省の各支部で仕分けしてから一斉に送る必要があります。

第3陣として現地で手に入らない物資と、各自治体職員、金融機関や企業の代表、建物解体や土建技術を持つ民間人を陸路で派遣します。現地到着は災害発生から2-3日後になります。人命救助は終わっており、行方不明者の捜索と二次災害の防止、被災者支援が主な仕事です。

被災者は自宅の被害状況によって、二次災害が治れば自宅に戻る、避難所である体育館や公民館に留まる、2-3ヶ月で元の生活に戻れるなら仮設住宅か近隣自治体の公営住宅に移る、戻る見通しが何年も立たないなら他地域に移住する、など選択肢が分かれます。疲労が蓄積した被災者は環境が悪い場所に長くいるべきではありません。第3陣の支援は被災住民の実情を汲み取って適切な居住環境を仲介することです。

 

防災省の仕事:海外派遣

国内は平時であっても、外国で地震やハリケーンが発生していることもあります。現地で国際貢献が出来れば国家間の関係強化になります。大きな災害は経済活動も停止するため、国際為替市場でその国の通貨は暴落するのが普通です。そんな時に外国の救助隊が駆けつければ、その国は国際社会から見捨てられていないという証になるため、通貨暴落を抑えることも出来るのです。他国と災害研究の情報を共有することも大切です。