バカ田大学講義録

バカ田大学は、限りなくバカな話題を大真面目に論じる学舎です。学長の赤塚先生が不在のため、私、田吾作が講師を務めさせて頂いております。

心理学の考え方(1)

心理学を学べば、人の心が分かると考えている

方はおりますか?心理学は心の構造を解き明かすための学問ですが、それで相手が何を考えているか分かれば誰も苦労しません。

本来の心理学とは、「人の心は分からない」ことを前提としてそれを真摯に探求する学問です。心理学について書けばこのブログの全てが埋まる程奥深い世界ですが、今回は基本となる考え方だけを解説します。

 

1:他人の心は縛れない

恋愛やセールスの指南書には、相手の心を思い通りに動かす方法が書かれていますが、これは

2つの点で論理が破綻しています。

一つは人間は考え方や物事の受け止め方が千差万別であり、同じ言葉でも全く逆の意味に捉えることがあるからです。

もう一つは、書籍として出版されることで相手にも自分の手のうちがバレている可能性が高いということです。その場合、自分が相手をコントロールしたい気持ちが露呈することで距離を置かれるでしょう。人間は本来精神の自由を求めているからです。

精神科医ヴィクトール・フランクルは、ナチスドイツの収容所生活で精神の極限状況を記録した事で知られています。フランクル曰く、「人間は死を強制されても精神の自由は奪われない。何故なら飢えに苦しみながらも、他人を助けている人々がいるからだ。理不尽な状況に置かれている時、それでもなお他人を信頼するか・しないかの自由を人間は持っている。」

暴力や権力を盾に、或いは金銭や地位を餌にして他人を従わせること出来ても、人は表面的に服従しているだけであり心をコントロールすることは出来ないのです。

 

不可能に挑戦した事例:

ソビエト連邦北朝鮮のような独裁体制は、

資本主義や個人の自由に関する思想を唱える人物は政権運営を危うくするため、秘密警察に逮捕させて虐殺しています。その前の段階で、覚醒剤と電気ショックを使用してマインドコントロールを行いました。薬物を使用すれば、精神は幻覚妄想に支配され自由を失います。

また、脳神経は微細な電気信号のやり取りで活動しているため、反抗的な人間の脳に強い電気を流すと、思考や意欲が阻害され服従してしまうのです。

動物実験でも同じ効果が確認されています。虐待を受け続けた精神が、自由の希求を諦めてしまうのです。そして児童虐待やDVの被害者も同じ状態にあり、精神は縛られた状態であると考えられます。

心理学の知見を服従や洗脳に使用することは、医療器具で殺人を行うのと同じです。「親から虐待されていた」「DVを受けていた」人は成長しても心が縛られた状態であるケースも多いです。心理カウンセリングはそうした人々に心は自由であることを自覚してもらう方法論であり、他人を従わせることではないのです。

 

2:「不幸な」人間はいない

「私は恵まれてない」「私は不幸な人間だ」誰しも自分は不幸だと考えることはあるとおもいますが、心理学はこれを否定します。

ルフレッド・アドラーは「アドラー心理学」の確立者です。アドラーは「人は過去への囚われではなく、未来への願望によって思考している」と考えました。

例えば貧困家庭に生まれ育ったり、障害を抱えて生きている人々がいます。自分がその立場であれば、現在の境遇を嘆き、未来を悲観するでしょう。ですが社会で生き生きと活躍している人もいるのです。

「不幸を嘆いて未来を悲観する人」と「不幸をバネにして未来に希望を持つ人」、両者の違いは「過去の出来事は変えられないが、現在の自分がそれをどう意味付けるかは決められる。大切なことは未来に向かってどう生きたいか」

という前提の上で「幸せになりたい」もしくは「不幸な現状を維持したい」という考え方の違いなのです。

「自分は不幸」ではなく「不幸だと考えているに過ぎない」と認識を改めること、そうしなければ他人の目からどれだけ恵まれていても、「不幸な自分」から脱することが出来ません。