ゲームの終わり
3章に渡って、個人の利益と分配ゲームを
説いてきました。個人間の利益を巡る
対立に終わりは見えるのか?
「分配を巡る三つの平等原理」
必要原理:最も必要とする人間に多く分配される
北欧諸国のような高福祉国家の政策基盤
平等原理:成果と必要に関係なく、メンバー全員 に平等に分配される。共産主義国家の政策基盤
均衡原理:成果を上げた者により多く分配される
三つのうち、どれが平等で納得出来るかは個人の立場によるため、分配の参加メンバーが同じ
立場でなければ、ゲームに決着がつきません。
必要原理に基づいて富を分配すれば、均衡原理の人間は絶対に反対するからです。立場の違いを超えて考えるために、このゲームが始まった時点に立ち返ってみます。
「遺産相続の分配」
親が亡くなった後、兄弟間で遺産を整理して
分配すると考えてみます。この時点での各人の立場は、
長男:住宅ローンや子供の教育費などで借金が重なり、金を必要としている:必要原理
次男:現在・今後とも大きな出費予定はない
親との関係はたまに帰省する程度:平等原理
長女:実家に残り、一人で親の介護を
担ってきた:均衡原理
とします。この場合、長男と長女が相続の分け前を巡って対立が予想されますが、両者は遺産を要求する動機が全く異なるために議論が噛み合いません。裁判になる前に、中立の立場にいる次男が仲裁案を提示すべきでしょう。
「仲裁案」
長女は一人で介護労働を行なっており、二人の相続人からの報酬として、最も多くの遺産を相続する権利がある。一方長男は、最も金を必要としているが、あくまで本人の問題であり遺産を多く分割する義務はない。
しかしここで考えたいのは、親が生前だった場合長男に資金援助していた可能性が高いということ。従って長男は長女と次男から借金するという形式をもって、一時的に最も多く相続し、資金繰りの目処がついた時点で二人に返済していく。
次男は借金返済の履行状況がどうなっても、三人のうちで最も相続への不公平感が少ない立場にあるため、対立している長男と長女の間を今後も取り持つ。仮に長男と長女が遺産返済を巡って決裂した場合、次男への返済も行われなくなるため次男も損失を被る。従って次男は二人の関係に傍観者ではいられない。
長男の必要資金を長女だけでなく、次男にも出してもらうのは、長女の負担軽減と、仲裁者の立場を今後も続けさせるためである。
上記の仲裁案は、最初に三人に平等原理を適用し、長女への報酬として均衡原理を適用、長男への借金として必要原理を適用しています。
これはあくまで一例ですが、分配ゲームをメンバーが納得する形に終わらせるためには、
一つのゲームに各メンバーが思い描く
平等原理を全て適用する必要がありそうです。