バカ田大学講義録

バカ田大学は、限りなくバカな話題を大真面目に論じる学舎です。学長の赤塚先生が不在のため、私、田吾作が講師を務めさせて頂いております。

会社員の給料が上がらない理由

「ゲームはまだ終わらない」

前回は富の分配を巡って人々が対立する構図を

説明しました。しかし社会集団を維持するためには、利益を生み出さないメンバーにも分配する必要がある。その場合利益を直接生み出している人間は、本来の報酬から利益を差し引かれています。「これだけ働いてるのに給料が上がらない!保険料ばかり取られて割に合わない!」と会社員は皆思っています。

経済学とは「富の分配」をいかに公平にするかを研究する学問なのです。

 

「給料は企業と社員の分配交渉による」

企業とは利益がいくら出ても、それだけの理由で社員の給料を上げたりしません。逆に大赤字が出ても給料を簡単には下げられません。

 

成果主義型の報酬体系を取るのは、民間保険の営業や水商売など従業員を個人事業主として扱う企業だけです。これらの業態は社会に有ってもなくても困りません。そのため景気の動向により売り上げが安定しないのですが、その分社員の報酬が下がるだけなので企業の利益を確保出来ます。売り上げの少ない社員は当然辞めていくかクビになりますが、個人営業は本人のスキル次第なので新入社員に教育コストをかける必要がなく、景気が戻れば新しい人間を雇うだけです。

 

公務員や医療機関のように、景気が悪くても災害が起きても常に人員を確保しなければいけない職種もあります。複雑な制度を理解して働く必要があるので、職員教育にもコストがかかります。そのため人を入れ替えることが容易ではなく、一度入職すれば基本的にクビになりません。

 

仕事は基本的に決まった作業ですが、長く勤めれば様々な問題が出くわしますし、中には緊急で対処しなければ会社が倒産するという非常事態も起きます。ベテラン社員はそうした場合の対応策を経験しており、若手社員よりは有用に動けます。これは優秀さではなく経験値の問題です。もしもそうした社員が報酬増額の交渉を切り出した場合、会社としては雇っておく利益と報酬に支払うコストを天秤にかけることになります。春闘などの労組での団体交渉は、労働時間を幾らで売買するかの値段交渉なのです。逆を言えば、社員がどれほど利益を上げていても会社と交渉出来る手段がなければ給料は上がりません。