ルフィの強さの理由は「弱さの自覚」である
麦わらのルフィは何故強敵に勝ち続けることが出来るのか、その理由はルフィの「柔軟性」と
「弱さ」にあります。
柔軟な身体と思考
ルフィはゴムゴムの実を食べた全身ゴム人間であり、身体が柔軟性に富んでいます。戦闘場面においては打撃によるダメージを受けない。跳躍力を利用して優位な戦闘体勢を取れる。応用技を戦闘中に考えて繰り出すことが出来るなどの利点があります。
ルフィは戦闘だけでなく、思考も柔軟性に富んでいます。人魚島での戦いの冒頭で、怪物クラーケンに出会ったとき、ルフィがとった選択は「仲間にする」でした。
また、最初の青雉との戦闘でルフィは負けるのですが、この時ルフィは仲間が揃った状況下で、敢えて一人で戦っています。
一見全員で戦う方が有利にみえますが、ルフィは青雉との実力差は全員が全力で戦っても負けること、その場合仲間たちは全滅することを理解していました。最初に青雉に「一対一」の戦いであることを確認させてから、仲間を見逃してもらうために「全力で戦って負けること」を選択しています。
普段は勝つまで戦うけれど、目的達成のために敢えて勝利に拘らない。その場での最善手を打てることが強いのです。
弱さの自覚
ルフィの強さの最大の理由は「自分の弱点」に極めて自覚的である事です。
ナミを救うためにアーロンパークに乗り込んだルフィはアーロンから、「人間であるお前に何の強みがあるか」を問われて答えます。
「俺は泳げねえんだ。海図も読めねえし、メシも作れねえ、俺は仲間に助けてもらわねえと一人で生きていけない自信がある!」
ワンピースのテーマはこの一言に集約されています。ルフィは様々な攻撃が可能ですが悪魔の実を食べているので泳げません。それ以外にも生きる上で出来ないことは沢山あり、それを仲間にどう助けてもらうかを理解しています。
弱さを隠すでも、克服するでもなく、仲間にフォローして貰う。そのために自分も全力で仲間を助ける。ルフィだけでなく、麦わらの一味全員の共通認識であり、戦闘においては多くの連携技を生み出してきました。ルフィの強さは、
自分が生きるために仲間を大切にすることに
支えられています。
分業と社会の意味
私たち一般社会も構図は全く同じです。最近はフリーランスの仕事もありますが、社会人として働くには企業・公共機関などの組織集団に所属し、自分に与えられた仕事をこなす必要があります。
例えば自分が営業マンとして自社商品を宣伝し、それが売れれば会社に利益で貢献していると考えます。ですがその商品が売れるためには、商品の企画・開発、行政の許認可、材料の購入、製造、品質管理、輸送、在庫管理、代金の回収までの行程があり、いずれが欠けても商品は売れません。企業は人事、経理、総務など利益に繋がらない部門で働く人も多数存在しますが、いずれが欠けても会社は潰れます。
フリーランスとして独立する、或いは自分で起業した場合でも、仕事は決まった作業をこなすだけでは終わりません。銀行や投資家からの資金集めに始まり、宣伝、商品の販売と買い付け、仕事の請負・作業・納入、代金の回収、資金繰りまでの作業を自分一人で行わなければならず、苦手な作業があるという理由でどれか一つを怠れば、他の作業で補填してもすぐに破綻します。
一人で生きていくとは苦手分野も全て行うことであり、この大変な作業を仲間内で寄り集まり、作業への適性に応じて「分業」を行う集団こそが「社会」なのです。
自分は何が得意で何が出来ないか、出来ないことは誰を仲間にすれば補えるか。社会生活を営む上で、個人が全てを行うよりも誰を仲間に加えるか考え、集団全体の底上げを図るほうが、結果として個人のパフォーマンスは向上します。ワンピースは私たちにその事を繰り返し伝えているのです。